世界的ベストセラー「スマホ脳」を読んで
子どもの教育が危ない! その①
世界的なベストセラー「スマホ脳」を読んで
著者はアンデシュ・ハンセンという精神科医のスウェーデン人です。
この本の帯に書いてある文は下記のとおりです。
・SNSには脳の報酬中枢を煽る(あおる)仕組みがある
・IT企業トップは子供にスマホを与えない
・「心の病」が増えたその理由
・人生の数年がフェイスブックに吸い取られる
・スマホとの接触時間が利益になる企業・SNSが女子の自信を失わせている
・ツイッターに隠された「依存」の仕掛け
・幼児にはタブレット学習は向かない
・マルチタスクができる人はごくわずか
・私たちのIQは下がってきている
・集中力を取り戻す具体的な手段
子どもを持つ親としては、なかなか気になる内容ではないでしょうか。
もし、現在も、今までも、そして、これからも私たちはスマホを所持し、または、タブレット端末を持ち、趣味や仕事、そして学習教材としてそれらのデジタルデバイスを持ち続けたら…うちの子供は、人間は、人間の脳はどのような方向へ進んでいくのか気になるのではないでしょうか?
最近では、幼児向けや児童向けのAIを駆使したデジタルコンテンツがもてはやされ、テレビでも、ネットでも宣伝戦が繰り広げられています。政府もやっと教育現場にタブレット端末を配布することを真剣に取り組むようになりました。1970年代テレビが一般化し、テレビの子どもへの悪影響が報道されたこともありました。それと同時にテレビゲームが普及し、今ではテレビもゲームも一家に一台から一人一台の普及率となりました。さらに、スマホの出現です。大人から子供までその所持率はどんどん増えるばかりです。逆にスマホを所持していないと生活の基盤が崩れてしまう生活リズムの中にどっぷりとはまっている人も多数いるはずです。実際その用途は数々の家電製品や生活関連にまで及んでいます。「世界の工場」である中国ではデジタル化が日本よりも発展し?AIで国家をコントロールするまでになりました。日本はやっと2020年にデジタル庁などを創設しました。
しかし、このような進歩が果たしてよいものなのだろうか?未来を語ることで、進歩や発展を語ることで希望や輝ける未来をが人は望みますが、この20年~30年で今までにない犯罪や病理が発生しているように私には思えるのです。
私は学生時代から子どもの教育について考えてきました。つい数年前も、先進国が行うOECDの教育調査でも、日本の中で最も優れた結果を出したのは、秋田県の福地村の小学生でした。この村には学習塾も、コンビニもなく、携帯電話もあまり普及していない自然豊かな村だったのです。様々な教育コンテンツがある、塾や予備校などがある都会の小学生ではなかったのです。この事実をなぜ政府は、文部科学省は考えないのでしょうか?最近、日本政府の新型コロナ対策でグーグルと提携したというニュースがありました。デジタル化ということで、日本政府もGAFAの支配下にはいるのか危惧するところです。
さて、なぜ私がこの本を紹介したいのかというと、教師生活37年、私が今まで子どもたちと教育現場で目の当たりにしていたことが、この本で納得した部分が多かったということです。では、その危惧していることは何か。次の5つです。
①記憶力が悪くなった
英語のテスト対策において、当塾ではテスト前に教科書を暗記させていますが、その暗記テストがなかなか先に進めない生徒が増えました。丸暗記ではないのでそれほど難しいわけでもないのですが、すべてを終わらせるのに今までの倍以上時間を費やします。さらに悲しいことに、知識の定着度もあまりよくありません。以前の生徒は多少学力がない生徒でもそれなりにこなしていたことが、今の生徒は普通の子でもこんな調子なのです。
②集中力がない(何かしていないと落ち着かない?)
特に小学生は、おしゃべりが始まると止まりません。勉強だけでは集中力が続かないと思い、少し脱線させますが、一度脱線したらもとに戻すのに一苦労です。よく言う「切り替え」ができない生徒が増えました。また、問題の採点をしている最中、待っている間にすぐにお絵描きが始まります。何かをしてないと間がもたないようです。
③塾を忘れる生徒の増加
当塾では毎週2回の授業をしていますが、当日、塾があるのを忘れていたとか、寝ていたとかでよく塾を休む生徒が増えました。学校や部活動が終わりその後すぐに塾へ来るはずなのに、たまたま部活動がない日や学校がない日になると、塾の存在を忘れて寝ている始末です。何度もラインや携帯で呼び出している情けなさです。なぜ、塾の前に眠るのかよくわかりません。そんなに疲れているのか?I
④授業中に眠る生徒の増加
当学館の授業形態(自学自習が基本)が眠気をそそるのかもしれませんが、昔の生徒もこっくり、こっくり、ビクッ!と眠気を我慢しながら頑張っていました。が、最近の子は爆睡状態で、さらに悪びれることもないのです。塾に来て、勉強するために来ているのに、平気で寝ているのです。私も以前は部活動等で疲れているのだろうと数分間は寝かせてあげて、勉強を続けさせていましたが、最近は呆れるばかりです。ここにきて、うっかり寝てしまって、(たまによだれを垂らして)焦って勉強に取り組む、それが昔の生徒でした。
⑤宿題をやってくる子とやってこない子の差が歴然に
これも当たり前のことですが、宿題をやってくる子は成績がどんどん上昇します。しかし、そうでない子が増えてきたのが気になっています。そして、その差が極端なのです。もちろん、宿題を忘れないようにといろいろな工夫をして取り組ませていますが、毎回忘れる生徒の度合いが多くなった気がします。能力的には決して劣っているとは思わない子でも常態化しているのです。成績的には塾でしっかりやらしているので問題はないのですが、もっと伸びる力を自分から閉じ込めているのが悲しい限りです。厳しく注意することも昔はありましたが、このご時世で厳しくもできず、さらには厳しく注意すると怒られた経験がない子どもたちは、すぐに塾を辞める始末です。こうして、何人も生徒が辞めていったのも事実です。
なぜ、このように子供たちが変わってしまったのだろうか?時代が変われば人も変わるとは思いますが、非常にやりにくくなった気がしていました。そんな時、この本が目についたのです。そして、私が一番知りたかったのは「集中力がなぜなくなったのか」「なぜ記憶力が低下したのか」そして、「なぜ授業中居眠りをしたり、塾の存在を忘れるほど家で寝てしまうのか」(塾へ来る時間帯は夕方~夜なのです)そのことへの示唆がこの本に記載されていたのです。著者は学術的な裏付け(調査)をもとにしているので、かなり信憑性が高いと思います。私が気になった内容をまとめ次回掲載したいと思います。ただし、これはスウェーデンや欧米での話なので日本人にあてはまるかはわかりませんが、確実に言えることは日本より速くデジタル化が進んだ国からの研究結果だということです。